大切な人が統合失調症になって性格が激変した。
そう悩んでいる方に向けて、実際に統合失調症を患っている私の目線で「こう接して欲しい」というのを書き留めようと思います。
私は7年前に統合失調症と診断されて、陽性症状と陰性症状を繰り返してきました。
今は寛解(かんかい)に近いくらいの状態ですが、陽性症状の時に「一体こいつの頭の中はどうなっているんだ」と家族に心配をかけたこともあり、統合失調症の独特な思考とその接し方について私の見解を陽性症状の時と陰性症状の時、回復期の3つに分けてお伝えします。
統合失調症の方との接し方
陽性症状の時
統合失調症の陽性症状には大きく分けて、幻聴、妄想、幻覚があります。
中でも一番辛かったのは幻聴です。
自分を全否定するような声が頻繁に聞こえ、罪悪感、恥ずかしさ、自己否定感に苛まれます。
その声の内容は自分が心で思ったことに対して言ってくるため、まるで自分の心で思ったことが筒抜けになっていると感じます。
これらのことは本人にとっては現実に起こっていると確信しているため、それを簡単に否定されると「なんで真実を隠すの?」とか「自分だけが真実をしってしまって誰も味方が居ない」と言った絶望感を味わいます。
ここで大切なことは、本人が信じている妄想や幻聴の世界を否定するのではなく、信じるのでもなく、理解する必要があります。
ポイントとしては「そう考えているあなたはその世界で何をしたい?」とか「その世界で幸せに生きるにはどうしたら良い?」と妄想や幻聴の世界で生きていることを肯定した上で本人の心に寄り添う会話が好ましいです。
このような質問は妄想や現実の世界関係なく、どんな世界になっても変わらない普遍的な人間としての在り方を問う質問になるため、本人がどんなにエキセントリックな返答しても、普遍的な会話が出来ます。
例えば)「その世界で何をしたい?」という質問に対して「秘密組織の悪事を暴きたい」という返事が来たとします。一見おかしな回答ですが、悪事を暴きたいという正義の心を持っていることがわかります。
つまりその人の正義感あふれる性格までは変わっていないということになります。
そこで正しい現実に戻って貰いたいという気持ちから「そんな秘密組織なんて存在しないよ」と言ってしまってはいけません。
何故ならあなたのその一言だけで、本人が信じる現実を変えることはできないからです。
それを自覚して下さい。
陽性症状の時は本人がどんな世界を生きていてそれに対してどんな考えを持っているか理解してあげて下さい。
本人にとっては「悪の秘密組織」が身近に存在する現実があるため、そういう場合「悪事を暴く」という考え方は褒めるべき対象の考え方になります。
つまり「悪に立ち向かう勇気が凄いね」と褒めてやるのです。
だってそうですよね?
大きな秘密組織の悪事を暴くという高い志はジャーナリズム精神満載じゃないですか?
本人がおかしくなったのではなく、本人が生きている環境が変化したのです。
本人は正義感が強いとても良い人間です。
私は妄想や幻聴の世界で長年生きてきましたが、その中で生きている私自身の性格は何も変わらなかったです。
私が変わったのではなく環境がSFやファンタジーのような世界に一変してしまったので、その世界に慣れる為に必死になって生きていただけなのです。
統合失調症になると性格が変わると言われていますが、信じている現実が変わるだけで性格そのものは何も変わらないのです。
ここで注意すべきことは、本人が信じている世界をあくまでも客観視することが大切です。
一緒になって信じているフリをするのは良くないです。
「そんな世界で生きているあなたはこう考えるのね」と世界が変わってしまった事実にを否定せず、その世界で一生懸命に生きている本人を支えるのです。
ポイントは正しい現実の世界に戻してやろうと考えるのではなく、妄想や幻聴の世界でもたくましく生きることが出来るようにすることです。
「このままずっと正しい現実を認識しなかったらどうしよう」と不安に思うかもしれませんが、薬を正しく服用すればそういった世界は小さくなって来ます。
実際にこれを書いている私は今でも「もしかしたら自分が統合失調症という病気を広めた人間かもしれない」とか「自分の心の声が周りに聴かれている世界が存在するのかな?」といった妄想や幻聴の世界を何処か無意識に信じている自分が居ることを自覚しています。
99%は信じていなくても、そんな世界がバカらしいと100%思えないのです。
でも私が書いているこの文章にそんな素振りがありますか?
私は自分の経験が人の役に立つという喜びを感じるためにこのブログを始めましたが、薬を服用することでここまでの考え方が出来るようになるのです。
例え妄想や幻聴の世界を生きていても「人に迷惑をかけない」「人の役に立ちたい」そういう人格までは変わらないのです。
もし会話の中で他人に迷惑をかける考え方を持っていると判断したならば、「他人に迷惑をかけてはダメ」と強く否定しましょう。
何度も言いますが、本人が変わったという考え方よりも、本人が信じる世界が変わったと理解してあげましょう。
次に陰性症状時の接し方について説明します。
陰性症状の時
陰性症状の時は、何もやる気が起きない、とにかく眠りたいなどの状態が続きます。
陰性症状の時に家族が陥りやすい考え方としては、「もう良くなったから働けるんじゃないか」とか「なんでそんなに怠けているの」という思考です。
陰性症状はうつ病の症状によく似ています。
接し方としては長い目で見守るということが大切になります。
短期的に見てしまうと、陽性症状に比べて正しい現実を認識できる分良くなったと感じてしまいますが、本人としてはこの時期も辛い状態にあります。
陽性症状が落ち着き、現実的な思考をすることが出来る反面「これからの未来」について考える余裕が出来るため、「これから先どうなるんだろう」と言った後ろ向きな思考に陥りやすい状態になります。
しかし、陰性症状が出ているってことは回復に向けて着々と進んでいるという希望があります。
何故なら統合失調症の症状には回復に向けて段階的な症状の変化が現れる必要があると考えることが出来るからです。
陽性症状が長くと脳をフル稼働させるのが日常化して、そのままだと脳が疲弊してしまいます。
フル稼働して疲れた脳を休ませる必要があるのです。
その為に、やる気が起きないといった状態に仕向けることで脳を休ませる期間を設けることが出来るのです。
陽性症状が脳をフル稼働する時期なら、陰性症状は脳を休める時期に値します。
なので具体的な接し方としては、刺激的なことを避け、出来るだけ脳を休ませる環境を整えることが大切なのです。
回復期
回復期になるとようやく社会復帰の目途が立ちます。
この時期は妄想や幻聴の世界を信じる気持ちがほとんどなく落ち着いて物事を考えることができます。
でも焦りは禁物です。
この時期になると本人が働きたい意志が出ていることもありますが、実際に働いてみると人間関係で悩みます。
何故なら今まで陽性症状の時に感じた自己否定感が残っているため、自己否定感からくるストレスがきっかけで軽い陽性症状が出たりすることがあるためです。
家に居る時なら軽い陽性症状は何とでもなりますが、いざ社会に出てみると時間に縛られる感覚や人間関係のストレスを感じるため、休職中にストレスに慣れていない人は再発する可能性だってあります。
なので回復期の最初には自己否定感を無くし、自己肯定感を高める努力が必要になります。
自己肯定感を根本から高めるには、自分自身を深く知る必要があります。
自分自身を知るためにおすすめな方法を下記の記事にまとめていますので良かったら本人に教えてあげて下さい。
統合失調症は大変だけど人として成長できるメリットもある
統合失調症は凄く辛い病気になります。
ただ、この病気を乗り越えた身としては結果的に病気のおかげで成長できた面がいくつもあります。
ただ以前の自分に戻るだけでは勿体ないです。
病気を克服して以前の自分よりさらに高い次元の人間になることで、病気にも感謝することが出来ます。
この病気を通して色々な人に迷惑をかけて来ましたが、今となっては申し訳ないという感覚よりも先に感謝の気持ちがあふれています。
人は一人では生きて行けません。
統合失調症の方を支えてくれているあなたへ、あるお寺に飾っているありがたい言葉を一つ紹介します。
心配するのが愛情ではない。信頼すること。
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