【日月物語】序章 かつて、
世界は豊かだった。
けれどその豊かさは、
争いと欲望によって自らを壊し、
文明は静かに滅びていった。
人々は荒れ果てた大地に佇み、
残されたのは、風と水と、空にある太陽と月だった。
やがて人々は気づいた。
目に見えぬ力が、この自然の中に宿っていることを――。
そして、ある時代。
広い平野の一角にふたつの村があった。
一つは「お日見村」。
太陽を信じ、力強く生きることを尊ぶ人々の村。
もう一つは「お月見村」。
月を仰ぎ、静かに寄り添う心を育む村。
ふたつの村は、元は一つの村だった。
けれど、信じるものが違えば、心もすれ違う。
争いを避けるため、村人たちは互いに距離をとり、
その間に一つの社(やしろ)を建てた。
社にはふたりの巫女が住む。
お日見村の「あがり様」、
お月見村の「いり様」。
彼女たちは、
不思議な力で子どもの心を見抜き、
その“信仰の芽”を確かめる。
お日見村では十歳の子どもに「日の心」が芽生え、
お月見村では「月の心」が育つ。
――日の心とは、諦めずに前に進む力。
――月の心とは、他者を癒す静かな力。
村人たちはそれぞれの心を大切にし、
互いのやり方を尊重しつつ、
時に米や麻、酒や衣を交換しながら、慎ましく生きていた。
しかし、その均衡がある日、静かに揺らいだ。
お日見村の男と、お月見村の女が、 互いの心を超えて結ばれたのだ。
そして、その子が生まれた。
日と月が交わるとき、
「特別な子が生まれる」
――それは、村に伝わる古い言い伝えだった。
長く分かたれた日と月が、
再びひとつの光となる物語が、
静かに幕を開けた――。
4分で観れます☆
コメント