ある晩のこと。
コンコンと扉を叩く音がする。
「こんな夜更けに何かしら」
女は家の扉を開けると、
そこにはしわだらけの女が立っていた。
「ばぁ様、どうかされましたか」
「お主の娘に用がある」
「雪音に?一体何の用でしょう」
「娘には、これより社で暮らして貰う」
「えっ!?どういうことですか?」
「日月の心どちらも持たぬ者、その者はいずれ時をかけることになるじゃろう。そうなる前に心の仕度をせねば」
「時をかけるって、まさか雪音はここから居なくなってしまうのでしょうか?」
「言い伝えによるとそうなる」
「なんてこと・・・」
「安心せい、お主の娘がどこに行こうとも揺るぎない心を持てばまたいずれ会えるであろう」
「・・・」
女はしばらく黙っていた。
すると、奥の部屋から男が出て来た。
「なんだ、あがり様じゃないか、どうしたんだこんな夜更けに?」
女は男に事情を説明した。
「そうだったのか・・・」
そう言うと男はしばらく黙り込んでいた。
「よし!俺は決めたぞ!あがり様、雪音をお願いします!」
「あなた、本当にそれでいいの?」
「あぁ、あがり様なら安心だ、あとは雪音に聴いてみて、本人がそれを望むならな」
「わかりました。ばぁ様、それでは雪音を呼んで参ります」
こうして二人は雪音に事情を説明した。
「ママ、安心して、雪音はいつもお月様を見てるから」
「えぇ、ママも雪音のことを思いながらお月様にお祈りします」
「雪音、またな」
「うん、パパも元氣でね」
こうして雪音は社で暮らすことになった。
時をかけるその時まで・・・
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