人々の心は満ちていた。
太古の昔に心の大掃除を行った日から、
人々は月の心を持つ者と、
日の心を持つ者に分かれていた。
【日月物語】第1話「儀式」
とある雪の晩。
元氣な赤ん坊が産声を上げた。
「ほら、女の子だぞ」
男が赤ん坊を抱きかかえている。
「ありがとう、そしてこんにちは」
「元氣な赤ん坊だ!良くやったな、お疲れ様!」
「お名前は何に致しましょう?」
「そうだな、お前の話に乗って、雪音ってのはどうだい?」
「雪音・・・」
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「雪音!起きなさい!儀式に遅れるわよ!」
「うーん、まだ眠いよ」
「さっさと支度なさい」
「はーい」
雪音はしぶしぶベッドから起き上がってきた。
まだ雪が溶け残るこの時期に、
雪音は10歳の誕生日を迎えた。
「ママ、産んでくれてありがとう」
この村では誕生日という日は感謝の日。
お互いにありがとうを伝えることが風習になっている。
「雪音、産まれてきてくれてありがとう」
命とはなんだろうか。
今こうしてお互いにありがとうを伝え合っているが、
先祖10代前までさかのぼると1024人もの先祖が居たことになる。
20代前までさかのぼると100万人を越え、
30代前では10億人を越える。
その内の誰かが欠けてたら雪音は居ない。
そのことを知ってから知らずしてか、
両手を合わせ女は言った。
「ご先祖様、雪音をありがとうございます」
その様子をポカンと見上げる雪音。
「ねぇ、ママ、何で私は雪音って言うの」
「それはね、雪音が産まれる少し前から、
ママにはね、雪の音がずっと聴こえていたの。静寂の中にシンシンと降り注ぐ、本当に小さな音。それをパパに伝えたら、
パパは(雪に音なんかあるはずねぇ)と大笑いしちゃってね、村中のみんなに言いふらしていたのよ」
「ふーん」
「その話が氣に入ったパパが付けてくれたのよ」
「さぁ、そろそろ社に行かなくては、ばあ様に怒られてしまうわ」
バンと扉が開き、男が入ってきた。
「おーい、雪音、準備はいいか?もう行くぞ!」
男に連れられて雪音は村の外れにある社に向かった。
「ねぇ、パパ、雪の音って信じる?」
「なんだ、ママから聴いたのか?パパはそれよりもママを信じている、だからママが信じるものはパパの大切なモノなんだよ」
「ねぇパパ、なんで雪音だけ儀式が二つもあるの?」
「村のみんな儀式は一つだって言っているよ」
「それはなぁ、雪音がパパとママの特別な存在だからだよ」
「特別って?」
「すぐにわかる」
二人は社に着いた。
動画も全テロップなのでおすすめです☆
YouTube動画 第2話「麻と酒と」
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